眼球運動計測から児童の読書方法と理解度を探る
本研究は、2021年~2023年度集英社寄付金研究プロジェクト「学童の健やか成長支援プロジェクトI、II」と2021-2022年度の科研・挑戦的研究(萌芽)【21K18488:研究代表者 保坂寛】とによって展開される研究です。
計測実験の参加者は、柏市花野井小こどもルームの児童のうち、保護者から実験参加承諾書が提出された児童35人(1~5年生)です。
これまでの読書理解の研究は、児童自身による口頭報告や読書後の理解度テストなどの間接的な方法に基づく主観的な評価であったところ、本研究の視線追跡(eye tracking)では児童の読書時の眼球の生理的運動に基づくため、より客観的で科学的な測定評価が得られます。
集英社寄付金「学童の健やか成長支援プロジェクトI および II」
本プロジェクトは、当初、東京大学フューチャーセンター推進機構において、株式会社集英社のご理解と高額寄付金によって、柏市役所こども部学童保育課との連携の下、柏商工会議所、柏市教育委員会、および公益財団法人摘水軒記念文化振興財団のご協力とご支援を得て推進された。2018(平成30)~2020(令和2)年度は、プロジェクト1として柏市立小学校に付設された学童保育制度「こどもルーム」に着目して、とくに42(最終年度43)か所のこどもルームに取り入れられている「読み聞かせ」に注目し、2018(平成30)年度に入所した小学1年生が3年生になるまでの3年間にわたる読書に関するアンケート調査(各年度の初めと終りに入所学童全員、約4,000人と保護者に対する読書に関するアンケート、および6こどもルームでは夏休み明けにさらに年1回の追加調査、回答率55~60%前後)を実施しました。
小学生を対象にした大規模な読書アンケートという定量的な調査に加え、6こどもルームでは、プログラムで雇用した大学生・院生や一般市民による特別の読み聞かせと読書観察を毎週実施して、学童が読書と勉強に取り組む様子を日誌に記録しました。このように、アンケート調査を通じて、学童保育における読書の経年実態調査を実施するとともに、学童保育において児童書やマンガ本などを読む習慣をつけさせる取り組みに参画して、その調査成果を研究としてまとめることを目的とした次第です。
併せて、学童および保護者や一般市民に向けて公開事業(講演やワークショップ)を実施し、読書や文化への理解と親和感を醸成して、誰もが生涯にわたり本を手に取って読書することに親しみ続け、未来への文化の継承と出版文化の持続可能な発展を支えていくような社会モデルの探求も試みました。
3年間の成果のうち市内43か所のこどもルームに通う学童の読書アンケート調査の報告は、2020年10月公開しておりますので、以下のリンクから閲覧ください。また、調査の成果の一部は、2021年9月開催の日本心理学会第85回大会において、オンデマンド一般研究発表「学童保育における読み聞かせ活動が児童の読書習慣の定着に与える影響」をおこなっています(cf. 一般研究発表 1Poster737-816-29.pdf)。
このプロジェクトIの成果と反省を踏まえて、2021年度から同プロジェクトIIとして、こどもルームで自由に読書するのを傍から観察するだけでは把握できない学童の注視力や本への関心度や内容理解度を計測するために、装着メガネ型アイトラッカーによる読書中の学童の眼球運動の計測と解析を開始しています。2021年度におけるそのトライアル計測の動画、および2021年度の研究報告会(2022年3月26日Zoom開催)、2022年度の研究報告会(2023年3月25日Zoom開催)の動画を以下に掲載いたします。
装着メガネ型アイトラッカーによる読書中の学童の眼球運動の計測と解析
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2021年度研究報告会(2022年3月26日)
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2022年度研究報告会(2023年3月25日)
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2022年3月31日をもって東京大学フューチャーセンター推進機構が当初の設置目的を達成して組織として廃止されました。このため、集英社寄付金「学童の健やか成長支援プロジェクトII」は、東京大学大学院新領域創成科学研究科人間環境専攻の稗方研究室における研究プロジェクトとして継続することなりました。引き続き皆様にはご支援、ご鞭撻いただきますようにお願いいたします。
集英社寄付金「学童の健やか成長支援プロジェクトII」担当責任者 特任研究員 小佐野重利