企業の従業員が,学生とともに学ぶリーダーシップの授業において学生に対してどのようなスタンスを取ることが従業員・学生双方の学びにとって最適かを探求し,そのスタンスを従業員が習得する方法を見出すことに取り組む.
幹部や管理職だけでなく従業員にも「権限によらないリーダーシップ」を身につけてほしいと考える企業は今世紀に入って増え続けているようである.これは1990年代に米国のグローバル企業で始まった人材開発のトレンドが,やや遅れて日本にも伝播したものである.これまで従業員の集合研修によってそうしたリーダーシップの開発が目指されることが多かったが,より新しい方法としては,大学の学生がリーダーシップを学んでいる現場(教室)に社員が同席して一緒にリーダーシップを身に着けようとするものがある.社員と学生の関わり方には多様な形がありうるが,これまで試行されたなかで最も多いのは企業がその企業や業界に関する共通課題を学生がグループワークによって解いていく過程でコーチとしてグループに介入するもので,一種の越境学習でもある.ところが,学生に対してどのようなスタンスをとるかが社員ひとりひとりの裁量に任される部分が多く,職場における上司と同様にふるまおうとしたり,逆に完全に対等なメンバーとして伴走したりする者もいる.企業側もこの越境学習について事前や期間中に従業員にどのような指導をして良いか正解を見いだせていない.さらに,学生が新入社員よりさらに社会化されていないZ世代であることも困難に拍車をかける.本研究は,学生担当の教員と協力して,社員たちに対してどのような事前研修・期間中研修・事後研修を行えば越境学習の成果をあげられるかを探るものである.
東京大学大学院新領域創成科学研究科
人間環境学専攻 知的システムデザイン分野
東京大学大学院新領域創成科学研究科
人間環境学専攻 知的システムデザイン分野